建物のコト

江戸時代から守り育ててきたこの土地の、古き良きものを残しながら、丁寧にリノベーションを進めています。

<Attic>  インテリアデザイナー・日神山 晃一

緩やかに繋がる創造の空間


「白百合荘」という名だった築50年の木造アパート2階をリノベーションし、2021年6月に開業した、ニシイケバレイのコワーキングスペースとシェアキッチン。

設計する上で最も意識したのが、「コワーキングスペース」と「シェアキッチン」とを2つの“点”として考えるのではなく、「Attic(アティック)」という1つの“面”として捉えることでした。

抜け感や回遊性といった、ニシイケバレイ全体の特徴でもある「境界線で遊ぶ」をクロスさせることで生まれるオリジナリティーを、隣り合うこの2つの場にも反映させています。



元々あった5つの部屋を区切っていた壁は全て取り払い、全体を見渡せるようにし、新たに張った床材も統一したデザインのものを使用することで、コワーキングスペースとシェアキッチン、役割の違う2つの場に対して、緩やかな繋がりを表現しました。


また、もともとあった扉は、使い方の多様性をもたせる事や、そこに今まで暮らしてきた住人のストーリーや、手垢までも楽しんでもらいたいという思いから、部屋の柱も含めて敢えて残すことにしたのですが、これもコワーキングスペースとシェアキッチンを繋ぐことに一役買っています。
その上で、コワーキングスペースとシェアキッチン、それぞれが果たすべき役割の違いを踏まえ、壁の色やライティングなど場に合わせて切り換えています。


シェアキッチンは、作ったお菓子や料理を撮影する際、被写体が綺麗に映るように壁全体を白く塗装。

照明は、同じく撮影のシチュエーションを意識して、キッチンは昼の気持ちいい光が入り込むイメージを大切に「昼白色」をメインに使用していますが、ダイニングはオレンジに寄った「電球色」にする事で、落ち着きを大切にして寛げる空間を演出しています。


一方、コワーキングスペースの壁は、この場を利用する人々が主役となってアイデアを生み出しながら、新たな空間をつくっていってほしいという思いも込めて、構造となる木の素材をそのまま活かしています。

様々な業種の人が利用するコワーキングスペースは、作り込み過ぎずに余白を残したデザインにする事で、時代によって変わる働き方や需要にも対応できるような、汎用性をもたせる事を大切にしました。

インテリアは、単に場所をつくって終わりではなく、そこを利用する人も含めてインテリアとなるので、これから活躍するプレイヤーによって、Atticがさらに彩られていくことを期待しています。

文責:インテリアデザイナー・日神山 晃一(ひかみやま こういち)
有限会社日神山内装 代表取締役、株式会社シーナタウン 代表取締役 | ニシイケバレイのまちづくりのプランニング、各エリアの設計・施工などを担当

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